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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)2234号 判決 1958年7月21日

東京都千代田区大手町一丁目七番地

控訴人

東京国税局長

篠川正次

右訴訟代理人弁護士

松宮隆

右指定代理人

大蔵事務官 吉沢利治

篠原章

田辺昭

同都北区王子町三丁目一六番地

被控訴人

高橋利栄

右訴訟代理人弁護士

金綱正己

右当事者間の昭和三十二年(ネ)第二二三四号課税処分取消請求控訴事件について、当裁判所は左のとおり判決する。

主文

原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

被控訴人は、「本件控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とするとの判決を求める。被控訴人の事実上の主張は原判決事実摘示のとおりであり、原判決の理由は正当である。」旨記載した答弁書を提出したまま、適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しない。

控訴代理人は、右期日に出頭して、主文同旨の判決を求めた。しかして控訴人の事実上の主張、証拠の援用、認否は、控訴代理人において、原判決書三枚目裏四行目の「(ト)経費五七八、九四三円」とあるを「(ト)経費五七九、六二三円、」同五行目の「総所得金額((ヘ)―(ト))三三三、一六九円」とあるを「総所得金額((ヘ)―(ト))三三二、四八九円」、同十行目の「その余の経費はすべて認める。」とあるを「その余の経費は三五九、一九一円である。」と訂正する。右の如く訂正をする所以は次のとおりである。原審における昭和三十一年十月八日午後一時の準備手続調書の末尾に記載されている準備手続の結果の要約のうち被控訴人主張の経費内訳の最後尾に「(10)その他(七丁裏(三)、(五)、(六)、(十一)、(十二)、(十四)、(十五)、(十六)、(十八))四〇〇、〇四六円」、「(被告の認めた経費の合計四五九、一九一円)」とあるはいずれも計算違いにて前者は三〇〇、〇四六円、後者は三五九、一九一円が正しいのである。蓋し被控訴人の昭和三十年二月二十二日附準備書面末尾記載の経費(七丁裏)につき右番号のものを摘出集計すれば三〇〇、〇四六円が正しいことが判明し、これに控訴人の争わない被控訴人主張の(1)原価償却費九、一八七円、(2)消耗品費二一、七二九円、(3)公租公課一六二四〇円、(4)旅費交通費一、八〇二円、(5)電気代燃料費八、七四七円、(6)水道代一、四四〇円を加えると控訴人の認めた経費の合計は三五九、一九一円が正しいことが判明するからである。控訴人が被控訴人主張の経費のうち否認しているのは、(4)接待交際費一一、一三一円、(8)通信費八、三八三円、(9)外註工賃二三二、六二九円だけであつて、控訴人は接待交際費を六、〇〇〇円、通信費を七、五四五円、外註工賃を二〇六、八八七円と認定するものである。従つて控訴人の主張する被控訴人の経費総額は五七九、六二三円となるので、被控訴人の総所得金額は三三二、四八九円となるわけである。又原判決事実摘示の被控訴人主張の「その他の経費四五九、一九一円」は「その他の経費三五九、一九一円」であり、「経費七一一、三三四円」は「経費六一一、三三四円」であらねばならないと述べ、原審における被控訴本人尋問の結果を援用したほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

被控訴人の昭和二十六年度分所得税について王子税務署長のなした所得金額を四〇二、七〇〇円とする旨の更正処分につき、控訴人が被控訴人の審査請求に基き昭和二十八年三月三十一日付で被控訴人の総所得金額を三二一、七〇〇円とする旨の決定をしたことは当事者間に争がなく、同年度の被控訴人の収支計算上、期首期末の各商品在庫高並びに仕入金額が控訴人主張のとおりであることは被控訴人の認めるところである。しかして同年度の被控訴人の収入金額が控訴人主張のとおり三、一四二、〇〇五円であること、したがつて、同年度における被控訴人の販売益金は九一二、一一二円となることは原判決の説示したとおりであるから、これらに関する原判決の理由(原判決書四枚目表十行目冒頭から同五枚目表五行目まで)をここに引用する。そこで被控訴人が同年度に支出したと主張する経費について判断するに、(イ)接待交際費(原判決書に接待交通費とあるは誤記と認める。)が被控訴人主張のとおり一一、一三一円であること、(ロ)通信費(電話料)が被控訴人主張のとおり八、三八三円であること、(ハ)外註工賃が被控訴人主張のとおりではなく二〇六、八八七円であることは原判決の説示したとおりであるから、これらに関する原判決の理由(判決書五枚目表八行目の「そして」以下同六枚目表七行目まで。)をここに引用する。しかして当事者間に争のないその他の経費が原判決摘示の四五九、一九一円ではなくして前記控訴人が訂正したとおり三五九、一九一円であることは記録をしらべてみるとまことに明瞭である。したがつてこの点に関する控訴人の当審における前記の訂正は許すべきである。以上の次第であるから被控訴人の支出した経費の合計は五八五、五九二円となり、これを前記販売益金九一二、一一二円より差引いた三二六、五二〇円が被控訴人の昭和二十六年度における総所得金額となる。したがつてこれを三二一、七〇〇円と認定した控訴人の前記審査決定には被控訴人のいうような違法は些かもないから、右金額中一四九、七六八円を超える部分の取消を求める被控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきであり、また二二六、五二〇円を超える部分を取消した原判決も不当である。よつて民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長判事 柳川昌勝 判事 坂本謁夫 判事 中村匡三)

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